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データキャリアとは?

データキャリア

データキャリアは、RFID(Radio Frequency Identification)、非接触式ICカード、ワイヤレスカードなどとも呼ばれる。カードやタグといわれる小型の記録媒体(データキャリア)とリーダもしくはリーダライタの組み合わせにより、電波を使って個体識別やデータの送受信を行うものだ。バーコードを中心とする自動認識技術のなかでデータの容量・耐環境性といった面での優位性を持っている反面、コストの問題といったデメリットを併せ持つ。これらのシステムを構築していく上での留意点を検討していく前にまず、データキャリアとは何かを考え、その概念および分類を行っておきたい。

データ・キャリアの分類

データキャリア

データキャリアには以下のような分類が可能である。それぞれの組み合わせにより多種多様なデータキャリアが実現する。 ■データ書込の可否 データキャリア内のデータを読み取ることだけが可能なリードオンリー型と、データの読み取り・書き込みを行うリードライト型がある。リードオンリー型は書かれている番号によって個体識別を行うIDとして利用されるのに対し、リードライト型は必要に応じてデータの更新を行う、まさしく「データキャリア」として使われる。なお、一度だけ書き込みが可能なOTP(One Time Programable)と呼ばれるリードオンリー型も存在する。 ■電源 リーダ・リーダライタからの電源供給によって回路が動作する無電池型と、内蔵された電源によって動作する電池内蔵型がある。電池内蔵型の電源は動作のための電源の他、内蔵しているメモリの保持のために使われる場合もある。 ■通信距離 電波を用いて通信を行うといっても、その交信距離はさまざまである。電気的には接続されていなくてもリーダ・リーダライタに物理的には接続するものから数mといった距離で交信するものもある。前者が近接型・後者が遠隔型と呼ばれていたが、ここ最近の非接触ICカードの分類では新しい用語が使われるようになっている。これに習うと、交信距離数mmのものを密着型、それ以外をリモート型と呼び、リモート型の中で20cm程度までを近接型、1m程度までを近傍型と呼ぶ。 ■形状 一般的な形状としてカード型があげられるが、各種目的に合せて箱型や円筒型、円板型などが用意されている。その他にも特殊な形状も存在している。

非接触ICカード

データキャリア

非接触型IC カードは、通信距離に応じて「密着型(Close coupling)」「近接型(Proximity)」「近傍型(Vicinity)」「遠隔型」に分類される。このうち、現在最も使われているのは近接型である。なお、遠隔型以外の非接触型ICカードはISO/IEC で標準化されている。 ■密着型 Close coupling 国際標準規格ISO/IEC10536 で規定されており、通信距離が2mm 以下と短いことから一般的にリーダライタに挿入して利用する形態を取る。しかし市場拡大が望めないため凍結され、やがて廃棄されるであろう。 ■近接型 Proximity 国際標準規格ISO/IEC14443 で規定されており、通信インタフェース仕様の違いからType-A とType-B が存在する。一般的に、社員証や学生証などに代表される身分証明書として、あるいは便利なプリペイドカード(交通分野や決済分野)などで幅広く利用されている。なお、日本で主流となっているソニーのFeliCa はType-C として標準化を行っていたが、2001 年に承認されることなく審議を打ち切られてしまった。しかし、FeliCa で使われている通信方式「Near Field Communication(NFC)」は、2003 年にISO/IEC 18092 として承認されている。接触型ICと非接触型ICが1チップ化され、情報共有しています。 ■近傍型 Vicinity 国際標準規格ISO15693 で規定されており、一般的にフリーゲートシステムなどに利用されるほか、無線(RFID)タグとして商品タグなどの物流管理に利用されることが多い。 ■遠隔型 まだ国際標準規格で規定されていない。マイクロ波の周波数帯を使用して数m の長距離での通信を必要とする分野で利用されている。

複合ICカード

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非接触型ICカードの中に複合型と呼ばれる物がある。これは接触型ICと非接触型ICを一枚に収めたカードのことである。接触型ICカードと非接触型ICカードのそれぞれの機能を利用するもので、磁気ストライプをも併せ持ち、接触型ICカードの豊富な既存のアプリケーション、インフラを利用しながら、操作性に優れた非接触型の機能を有効に利用することが可能となる。 ■Hybrid(ハイブリッド)混在カード 接触型チップと非接触型チップを一枚のカード内に収めたカード。接触型チップと非接触型チップは独立しており、共用はされていない。物理的に一枚のカードになっているだけで、それぞれの機能は個別に利用される。 ■Combi(コンビ)結合カード 接触型のチップと非接触型のチップが1チップ化され、チップ内のデータが共用されている。 なお、複合ICカードをさらに押し進めて考えていくと、密着型とリモート型を組み合せるハイブリッド型やコンビ型の同じ非接触型でも異なる性格を持つチップを融合した複合ICカードも今後は生まれてくるものと考えられる。  

リーダ・リーダライタの構成

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データキャリアのさまざまな種類について分類を行ってきたが、次にそれらと交信を行う機器について確認してみたい。 リーダ・リーダライタはデータキャリアと交信を行うアンテナ部と信号を増幅するアナログ部と信号をデコードするデジタル部とで構成される。これらに電源やシーケンサやコントローラ、表示機などが組み合わされ製品となる。下記は一例である。   ■据置型 アンテナ・アナログ・デジタル部に加え電源等を内蔵し、コントローラやシーケンサとデータを送受信する。固定されて利用される。データキャリアが接近してくることが前提である。アンテナのみ別付けになっているものや電源が別途に用意されているものもある。 【据置型例】   ■壁付型 アンテナ・アナログ・デジタル部が一体化しており、電源は別途に用意される。壁面等に固定されて利用される。据置型同様、データキャリアが接近してくることが前提である。   【壁付型例】   ■可搬型 アンテナ・アナログ・デジタル部が一体化しており、電源は別途に用意される。ハンディ型等リーダ・リーダライタが移動することが前提にして作られている機種で、データキャリアが近づいてくるのではなく、データキャリアに近づけて交信を行うためのものである。 【可搬型例】  

RFIDシステムの特徴

データキャリア

さて、ここでRFID・非接触型データキャリアシステムの特徴を整理してみたい。 ■接触抵抗がない 接触型のデータキャリアの交信にはリーダの物理的接触が不可欠で、このストレスによる摩耗による故障や破壊、データの劣化が生じてしまう。非接触型ではデータキャリアとリーダが接触しないためストレスが発生せず、そのための故障とは無縁である。密着型のデータキャリアでもデータの劣化等は発生しない。 ■操作手順が少ない 接触型のデータキャリアシステムでは、交信を行うために必ず接触をさせる必要があり、そのためには一定の手順が必要となる。非接触型の場合は、前述のようにデータキャリアとリーダの間に非金属体が存在していても交信が阻害されることがないので、接触させるためにかかる操作手順を軽減することができる。 ■外的環境に強い 非接触型では、データキャリアとリーダの間に非金属体が存在していても交信が阻害されることがない。したがって、水分・油分、埃や汚れなどが存在する環境での使用も可能になる。データキャリアやリーダを隠蔽したり防水加工することも可能だ。また、接続部が露出していないので静電気などの影響を受けにくい ■同時アクセスの可能性がある 接触型や密着型のデータキャリアシステムでは、データキャリアとリーダとの交信は必ず一対一で行われるが、リモート型では離れた距離からの通信が可能になるので、一台のリーダに同時に複数のデータキャリアがアクセスする可能性がある。同時に複数のデータキャリアがアクセスされた場合の処理についてはシステムによって異なる。一般的には交信できなくなるが、衝突防止・輻輳(ふくそう)制御といった考え方を実現し、複数同時認識できるデータキャリアシステムもある。

データキャリアシステムの構築にあたって

データキャリア

一口にRFIDシステムといってもこれまでみてきたように限りないバリエーションが存在する。数多くの選択肢があることを踏まえた上でシステムの構築にあたってどのような点に留意していくべきかを考えていきたい。 標準品・規格 交信範囲 通信速度 遠隔型と接触型・近接型の違い 輻輳(ふくそう)制御 RFIDシステム構築時の留意点をいくつか挙げてみたが、あくまで一例である。 RFIDが解決(しようと)する方法論はさまざまでありそれぞれの長所・短所がある。結局のところユーザが何をしたいかの把握が最も重要なポイントとなる。もちろんそれはRFIDに限ったことではないのだが、デバイスの特徴に振り回され、ついついこうあるべきだ、あって欲しいという方向に走りかねない。 RFIDがあくまでも問題解決の手段であるということを念頭においてシステムを検討しなければならない。

標準品・規格

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ユーザの中でRFIDシステムを検討される中で標準規格にのっとったものが欲しいと要求されるケースがある。もっともな要望であるが、残念ながらお応えするのは難しい。前項の中でも述べたが国際標準規格が制定されているのは数あるデータキャリアシステムの中で密着型のICカードのみなのである。注目されている近接型のICカードにしても論議はこれからというところであり、今しばらくはどの機種を持って標準といえることはないだろう。カード形状でないとなればなおさらである。標準品が現在存在しているのであればそれを選ばないということは問題があるかもしれない。しかし今はあるものから最もニーズに合うものを選ぶしかないのである。 ここで考えなければならないのは何故標準であることを求めるかにある。目的はシステムの導入にあたっての開発効率の向上や低コスト化であると考えられる。RFIDの導入は解決の手段であって目的ではないはずで、RFIDを既存のシステムの中でいかにうまく活用できるかを検討していく必要がある。 RFIDには標準はなくとも、既存のシステムの標準に沿っているということは重要である。例えば近接型のICカードの場合、85.6×54.0×0.76mmという大きさが定義されている。これは既存の磁気ストライプカードとの共用が念頭にある。「非接触型なのだから大きさや厚さはどうでもいい」という見方もあるが、「このカードは非接触としても磁気ストライプカードとしても使えます」という考えの方が既存のシステムを活かしやすい。

交信範囲

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データキャリアの交信距離は、システム構築上重要なスペックとなるが、誤解されやすいデータの一つである。通常データキャリアとリーダ・リーダライタが正対した状態でどのくらいの交信距離を持つかが示されるのだが、垂直状態での 距離等は示されない。データキャリアとリーダ・リーダライタの相関関係がわかりにくいのである。一例として弊社の電池内蔵型リードオンリーカードの感知範囲図をあげてみる。ご覧のようにカードがリーダに対して正対の時と垂直の時と では感知範囲が大きく異なる。このカードは中・長波帯を用いており指向性は緩くなっているが、短波帯やマイクロ波帯のデータキャリアシステムではもっとこのカーブが極端になる。システム構築時にどのような形でデータキャリアがリーダに接近するのかを確認し、好ましいシステムを検討しなければならない。

通信速度

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一般的にいってマイクロ波を使ったシステムが高速通信が可能で、短波帯のものがそれに続き、中波帯のものが低速通信ということになる。従って中波帯のものは、データ量の多くないID認識型の方が好ましいことになる。 特に書き込みに要する時間は重要である。RFIDの場合、データキャリアもしくはリーダ・リーダライタが移動している可能性があるため、書き込みに失敗する可能性が大きいためである。 移動する媒体に書き込みを行える時間とデータ量は、単に通信速度だけでは決まらない。データキャリアがリーダ・リーダライタの交信可能範囲にとどまっている時間から書き込みのための処理時間を引いて、通信速度で割ることで書き込みできる最大のデータ量が求められる。交信距離が短かったり、指向性が強いシステムであれば、移動するデータキャリアに書き込みできるデータ量は非常に小さいものとなる。こういう場合は書き込みは移動を止めて行う必要がある。

遠隔型と接触型・近接型の違い

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離れたところから認識を行う遠隔型のシステムは、操作をしてリーダ・リーダライタに読み込ませる作業を行う接触型・近接型とデータの取扱が異なることに注意が必要となる。 例えばアクセスコントロールシステムでリーダが扉の表側についている場合、接触型もしくは近接型であればリーダへ読み込ませる作業を明示的に行うのであり、そのデータは入室行為であるとみなしてよい。しかし、遠隔型の場合ではリーダに接近すればデータを読み取るため、そのデータは入室とは判断できない。入室したのかもしれないし、退室の際にデータが読み込まれたのかもしれない。場合によっては近づいただけかもしれない。あくまでもこれは扉付近を「通過した」というデータであり入室もしくは退室といった行為を特定できない。意識せずに認識できるという特徴は、逆に取得したデータによって行動に意味付けができないということでもあるのだ。 では遠隔型を利用して行動を規定するにはどうしたらよいか?それは複数の機器を組み合せてより多くの情報を得ることである。コストとの兼ね合いでどのように機器を組み合せるかを検討しなければならない。 部屋の外側・内側にリーダを設けた場合、外側→内側の順番に認識すれば入室と判断できるし、内側→外側の順番ならば退室となる。外側だけ認識した場合は、近づいただけか、入室したが内側で認識しなかったということが考えられる。 (不確定の入室) センサ類と組み合せて入室情報とともにデータキャリアを認識すれば入室、退室情報とともにデータキャリアを認識すれば退室と判断することもできる。 その他の方法として、押ボタンを押している間だけリーダが働くようにセットしておけば、意識的にボタンを押した時のみデータキャリアが認識するため、その情報を入室とみなすこともできる。

輻輳(ふくそう)制御

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RFIDシステムの特徴のところでも触れたが、遠隔型では一つのリーダ・リーダライタに複数のデータキャリアがアクセスする可能性がある。 一般的にはこの場合、通信ができなくなる。リードオンリー型であれば輻輳状態の時は認識ができないが、一旦遠ざけて一つ一つ認識させれば問題は解決する。対してリードライト型は注意が必要だ。複数個のデータキャリアに同時に書き込みを行えば失敗するだけでなく最悪データキャリアのデータを破壊してしまうこともある。 このため、同時にアクセスする可能性のあるところでは書き込みを行わないように運用しなければならない。 密着型の機種であれば物理的に必ず一対一になるためこれらの対策は不要であるが、近接型より交信距離の長いものでは何らかの制限・対策が必要だ。 もちろん、データキャリアの種類によっては輻輳状態に対応できる機種がある。例えば弊社が扱っているマイフェアという近接型の機種ではアンチコリジョン(衝突防止)という方法を使って複数枚のカードが同時にアクセスしても各々のカードに自由に書き込みができるような仕組みを持っている。 この仕組みを利用して複数人の決済を同時に行ったり、一人が複数枚のカードを持っていてもデータを破壊しないといった運用が可能になる。なお、マイフェアカードはリーダライタからの電源供給によって動作する無電源タイプなので物理的に制限なく何枚もアクセスできるというわけではない。 輻輳状態になることが想定され、それが避けられないところでは対応した機種が必要であろう。しかしながら運用で対処が可能な場合にはコストの安い未対応の機種も検討に値する。一概にどちらがよいとはいいきれないのだ。

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